オーバーテクノロジー

この言葉、フィクションのタイムスリップものなんかでよく使われますよね。

例えば、甲冑の武人たちが合戦する場所にタイムスリップした、普段は天変地異が起きた時や災害発生時に出動したり、国連の平和維持活動(PKOだっけ?)に精を出す、オリーブ色の軍服を着用した現代の最新兵器を駆使する、あの団体の方々が大活躍する映画とか。
例えば、太平洋戦争の真っ只中にタイムスリップした最新鋭イージス艦が、大活躍して歴史をめちゃめちゃにしてしまう、週刊漫画誌掲載のあの大人気連載漫画とか。

その時代に絶対にありえない最先端技術。
あったらいけない、あってはならない。
存在した時点で全ての史実がねじ曲がってしまうような、そういう技術を「オーバーテクノロジー」と呼びます。

さて。
この言葉、うちの工房にも大きく関係してきます。

事の発端は、ある日舞い込んできたとある一通のメールでした。

「そちらの竿に、ゴールドサーメットのガイドを取り付けることは可能でしょうか?」

(´−`) ンー・・・・・
無理です!

出来ないことは無いのですよ。ガイド自体、普通に購入できますから。
でもねー・・・
そもそも、ゴールドサーメットというガイド自体、ごく最近、それもグラファイト(カーボンですな)全盛になって開発されたものです。
当然、グラファイトの特性を生かすために開発されたものであって、しかも現代でなければ実現し得なかった物体なわけです。
当然ながらデザインもすごく今風。
正確な解答としては、「出来ない」のではなく、「やりたくない」または「ポリシーに反する」といったものになります。

私のポリシー。それは「バンブーロッドの時代なりのダサいデザイン」、そしてなにより「古き良き時代を感じられる道具としてのバンブーロッド」を追求することなのです。
だから今でも、何世代も前のカーボロイガイドを採用している訳で。
あと、過去にこんな要望もありました。
「グリップをメガバスのようなデザインにしてほしい」
それはよくわからないので、メガバスに特注してください。と回答させていただきました。
正直、知らないわけではないのですが、パクってみるほどのかっこいいデザイン(あくまで自分目線ですが)ではないと判断したからそう答えたまでで。あのデザインも、やっぱりカーボン基準での代物。カーボンだからああいうデザインが映えるし、機能的にも十二分なわけです。
肉の薄いブランク用の、現代のデザインでグリップを作ったら、間違いなく曲がりますよ。グリップが。断言します。
斬新なデザインというのは、斬新な素材のもとに生まれるということです。

では、その当時のようなデザインでガイドなりグリップなりが出来るということになれば、私はどうするか。
見た目「らしい」のであれば、問題なく採用するでしょう。なんせ、一時期SiC(シリコンカーバイト)のガイドを採用していた時期があったくらいですから。
それでも、このSiCは、足が非常に味があるというか、クラシカルだから採用したまでです。リングだけ最先端で、フット部分は昔の雰囲気を携えていたから採用したまで。(セイモガイドというやつね)今は絶版らしいので使用していないですがね。

そもそも、なんでも豊富にある時代の人間が時代をさかのぼるわけですから、考え方も正反対になります。
「当時の人ならどうやっただろう?」
あえて言うなら、アンダーテクノロジーというのだろうかどうかわかりませんが、当時の人の気持ちになって製作していくと、どうしてもそういうデザインになってしまい、やっぱり「らしい」ものになっていきます。
それがまたハマってるというのが素晴らしいことです。

「味のある」竿には、やっぱり「味のある」当時のアンダーテクノロジーなリールやルアーが似合うものです。

多分ね、あと何年経ってもこのスタイルは変えないでしょうね。
うちのバンブーロッドに「味」を感じられるようになったら、間違いなく「オッサン」化している証拠です。